結論
空き家の解体は、最初に業者と契約するところから始めないでください。先に自治体の補助制度と建物の名義を確認し、登録・許可を確認できる業者へ同じ条件で見積もりを頼みます。
契約後は、石綿の事前調査と必要な届出を済ませてから着工します。工事が終わった後も、登記された建物なら建物滅失登記、未登記の家屋なら自治体への届出が残ります。土地の固定資産税も解体前後で扱いが変わります。
順番を先に並べると、次の8段階です。
| 段階 | すること | 契約前か |
|---|---|---|
| 1 | 所有者・登記・残置物を確認する | 契約前 |
| 2 | 自治体へ補助金と必要な手続きを聞く | 契約前 |
| 3 | 業者の登録・許可を確認する | 契約前 |
| 4 | 2〜3社へ同じ条件で見積もりを頼む | 契約前 |
| 5 | 工事範囲と追加費用を書面で契約する | 契約前 |
| 6 | 石綿調査と法令・自治体の届出を確認する | 着工前 |
| 7 | 工事中の変更と完了書類を確認する | 工事中・完了時 |
| 8 | 滅失登記・自治体への届出・税を確認する | 工事後 |
1. 所有者と建物の状態を先に確認する
最初に、誰が解体を決められる建物なのかを確認します。相続した実家で名義変更が終わっていない、共有者がいる、土地と建物の所有者が違う、といった場合は、1人だけで契約を進めないでください。
建物内に家具、家電、衣類などが残っている場合は、建物の解体と残置物の処分を分けて整理します。見積もりに含めるのか、所有者が先に片づけるのかで、業者へ伝える条件が変わります。
登記された建物かどうかも確認します。登記されている建物は、工事後に建物滅失登記が必要です。未登記家屋は、所在地の自治体へ家屋滅失の届出が必要になることがあります。
2. 契約前に自治体へ補助金を確認する
空き家の解体補助金は、契約や着工の前に申請を求める制度が多くあります。先に契約すると対象外になることがあるため、見積もりを依頼する前後の段階で、市区町村の空き家担当へ次を聞いてください。
- 今年度に使える除却・解体の補助制度があるか
- 申請、現地調査、交付決定、契約の順番
- 建物の築年数、空き家期間、危険度などの条件
- 業者の登録・許可や所在地に条件があるか
- 受付中か、予算や件数の上限に達していないか
編集部が全市町村を確認した結果は、埼玉県63市町村の空き家解体補助金と千葉県54市町村の空き家解体補助金にまとめています。制度は年度途中でも受付を終えることがあるため、記事だけで判断せず自治体の最新情報を確認してください。
3. 登録・許可を確認できる業者へ頼む
国土交通省の案内は、解体工事を依頼するときに、建設業法の許可事業者または建設リサイクル法の登録事業者へ発注するよう案内しています。
出典: 国土交通省「住まいを解体するときは」(確認日: 2026-08-22)
候補業者には、見積もりを頼む段階で登録番号か許可番号を聞きます。番号が分かったら、都道府県の解体工事業者登録簿または建設業許可業者名簿で、商号と所在地も照合してください。
建設業許可を持つ業者は、解体工事業登録簿に載らない場合があります。片方の名簿だけを見て無登録と判断しないことが大切です。47都道府県の名簿の探し方は、解体業者の登録・許可を自分で確かめる方法で説明しています。
当サイトの掲載業者一覧は、公式サイトの情報と公的名簿を突き合わせ、登録・許可を確認できた業者だけを掲載しています。
4. 2〜3社へ同じ条件で見積もりを頼む

見積金額だけを比べる前に、各社へ伝える工事範囲をそろえます。少なくとも次の項目を同じ条件で伝えてください。
土地の売却に伴う解体では、古家付き土地の解体費用を誰が払うかも決め、売主・買主のうち実際に発注する人を見積書の宛名にします。
- 建物の所在地、構造、階数、延床面積
- 前面道路の幅と、隣家との間隔
- 基礎、塀、門、庭木、物置を撤去するか
- 家具や家電などの残置物を含めるか
- 解体後を更地、駐車場、建て替えのどれにするか
- 希望する工事時期
国土交通省も、複数の事業者から見積もりを取り、書面で契約することを勧めています。
候補を絞る順番と比較表は、解体業者の選び方7項目で確認してください。
編集部が地域の異なる解体業者3社の公式サイトを調べたところ、具体的な料金表を確認できた会社は0社でした。建物の構造、立地、石綿、外構などで条件が変わるため、根拠のない坪単価だけで予算を決めません。比較する項目は、解体工事の見積もりの見方にまとめています。
5. 工事範囲と追加費用を書面にする
契約書や見積書では、建物本体だけでなく、仮設足場、養生、廃材の分別・運搬・処分、外構、残置物、整地まで確認します。「一式」と書かれた項目は、何を含むのかを業者へ聞いてください。
特に、石綿を含む建材や地中埋設物は、調査や工事の途中で条件が変わることがあります。追加工事が必要になった場合について、次の4点を決めます。
- 何が見つかったら追加費用になるか
- 写真や数量などの根拠をどう示すか
- 追加見積もりを誰が承認するか
- 承認前に作業を止めるか、進めるか
口頭だけでなく、メールや変更契約書に残る形にしてください。
撤去範囲、追加費用、支払い、完了書類の決め方は、解体工事の契約書チェックリストで確認できます。
6. 石綿調査と着工前の届出を確認する
建築物の解体工事では、元請業者または自主施工者が、石綿を含む建材の使用有無を事前に調査する必要があります。建築物の解体部分の床面積が合計80平方メートル以上なら、調査結果の行政への報告も必要です。
出典: 環境省「石綿事前調査結果の報告について」(確認日: 2026-08-22)
見積書では、事前調査、分析が必要になった場合、石綿が見つかった場合の除去・運搬・処分を分けて確認します。調査前に除去費が確定しない場合は、結果が出た後に追加見積もりを確認する手順を決めてください。
80平方メートル未満の扱い、調査者の資格、除去後の記録は、解体工事のアスベスト調査で詳しく説明しています。
特定建設資材が使われた建築物の解体で、床面積が合計80平方メートル以上の場合は建設リサイクル法の対象です。発注者または自主施工者は、工事着手の7日前までに都道府県知事などへ届け出る必要があります。
出典: 国土交通省「建設リサイクル法の対象となる建設工事では届出が必要です」(確認日: 2026-08-22)
業者が書類作成や提出を支援する場合でも、発注者として届出の対象、提出先、提出日を確認します。自治体の条例や工事場所によって別の届出・標識・説明が必要なこともあるため、所在地の建築担当にも確認してください。
届出ごとの対象、担当者、期限は、解体工事の届出一覧で確認できます。
7. 工事中の変更と完了書類を確認する

着工前に、工期、作業時間、車両の出入り、近隣への案内を業者と確認します。近隣説明の方法は自治体の条例や現場条件で異なるため、「必ずこの形式」と決めつけず、誰がいつ説明するかを打ち合わせます。
同じ工程表に、電気・ガス・水道・電話線の停止・撤去も入れ、工事用水だけは使用終了日を業者と調整します。
挨拶の分担、訪問範囲、例文、騒音対策は、解体工事の近隣挨拶と騒音対策で確認できます。
工事中に地中埋設物などが見つかった場合は、契約前に決めた方法で写真と追加見積もりを確認します。所有者の了承前に追加工事を進める扱いになっていないか、連絡方法も決めておきます。
完了時には、契約した範囲が撤去され、整地されたかを現地で確認します。建物滅失登記に使う取壊しを証する書類についても、業者から受け取る書類と発行時期を確認してください。
廃材の処理完了は、紙または電子マニフェストで元請業者が管理します。施主が確認する書類との違いは、解体工事のマニフェストと完了報告で説明しています。
8. 建物滅失登記と固定資産税を確認する
国土交通省の案内では、登記された建物を解体した場合、解体完了後1か月以内に法務局で建物滅失登記を行う必要があります。法務局は、建物を取り壊した場合の申請手続きと様式を案内しています。
出典: 国土交通省「住まいを解体するときは」/法務局「建物を取り壊した/建物を新築した」(確認日: 2026-08-22)
未登記の家屋は法務局の登記記録がないため、所在地の自治体へ家屋滅失の届出が必要になることがあります。必要書類と期限は固定資産税担当へ確認してください。
税金は土地と家屋を分けて考えます。取り壊した家屋への固定資産税は翌年度以降かからなくなる一方、土地は住宅用地の特例が外れる可能性があります。合計額が一律に6倍になるわけではありません。解体前に、空き家を解体すると固定資産税はどうなるかと自治体の試算を確認してください。
契約前のチェックリスト
最後に、契約前までに確認する項目をまとめます。
- ☐ 所有者、共有者、登記の状態を確認した
- ☐ 自治体へ補助金と申請順序を確認した
- ☐ 業者の登録番号または許可番号を名簿で確認した
- ☐ 2〜3社へ同じ工事範囲を伝えた
- ☐ 石綿調査と追加費用の扱いを確認した
- ☐ 外構、残置物、整地を見積書で確認した
- ☐ 追加工事の承認方法を書面にした
- ☐ 着工前の届出を誰が確認するか決めた
- ☐ 工事後の滅失登記・自治体への届出を確認した
- ☐ 解体後の固定資産税を自治体へ確認した
空き家の解体では、「契約してから調べる」と戻せない手続きがあります。最初に自治体へ確認し、登録・許可と見積もりの条件をそろえてから契約してください。