結論
建物を解体するときは、元請業者または自主施工者が、工事部分のすべての材料についてアスベスト(石綿)含有の有無を事前に調べます。建築物の調査は、資格要件を満たす調査者が、設計図書などの書面と現地の両方を確認します。
施主が契約前に確認するのは、「アスベスト除去に対応できます」という宣伝文だけではありません。次の流れと提出物を見ます。
- 事前調査の範囲、調査者の資格、費用を見積書に入れる
- 書面・目視で判断できない建材は、分析するか、含有とみなして対応するかを決める
- 調査結果と必要な行政手続を着工前に確認する
- 含有建材があれば、作業方法、費用、工期を変更見積・変更契約で合意する
- 工事後に、写真を含む作業記録と完了報告を受け取る
解体する部分が80㎡未満でも、事前調査そのものは省略できません。80㎡は、建築物の解体工事で調査結果を行政へ報告する規模基準です。
80㎡未満でも事前調査は必要
厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトは、解体・改修作業にかかる部分の全材料について、工事規模の大小にかかわらず、工事前に事前調査を行う必要があると案内しています。
出典: 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「解体業者」(確認日: 2026-08-24)
建築物の解体部分の床面積が合計80㎡以上なら、元請業者または自主施工者が調査結果を労働基準監督署と都道府県等へ報告します。80㎡未満ではこの行政報告が対象外になる場合がありますが、書面調査、目視調査、結果記録、現場掲示などの必要な対応までなくなるわけではありません。
届出・報告の担当者と期限は、解体工事の届出一覧で手続ごとに確認できます。
建築時期と見た目だけでは判断しない
石綿は2006年9月から製造、輸入、使用等が禁止されています。厚生労働省は、それ以前に着工した戸建て住宅を含む建築物等には、防火、保温、断熱などの目的で使われている可能性があると案内しています。
出典: 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」(確認日: 2026-08-24)
ただし、建築年だけで含有の有無は決まりません。古い建物に必ず含まれるわけではなく、禁止後の建物だから調査を省略できるという意味でもありません。増改築や補修で別時期の建材が混在することもあります。
国土交通省・経済産業省の石綿(アスベスト)含有建材データベースは、製品名や製造時期を確認する手掛かりです。しかし、データベースだけで現場の建材を特定するものではありません。施主が壁や天井を削ったり、試料を採取したりせず、資格者の調査に任せてください。
アスベスト事前調査の流れ
1. 施主が図面と建物履歴を渡す
建築確認申請の副本、設計図、仕上表、改修・増築の記録、過去の石綿調査結果を探し、調査者へ渡します。資料がない場合も、資料がないことを伝えたうえで現地調査を行います。
発注者には、事前調査に役立つ情報の提供や、適正な費用・工期への配慮が求められます。資料を渡しただけで、施主自身が含有の有無を判定するわけではありません。
2. 資格者が書面調査と目視調査を行う
建築物の事前調査は、建築物石綿含有建材調査者など、法令上の要件を満たす者が行います。一戸建て等石綿含有建材調査者は、調査できる範囲が一戸建て住宅や共同住宅の住戸内部などに限られます。資格名だけでなく、今回の建物と調査範囲に対応できるか確認します。
書面調査では、建築時期、建材の種類、製品情報などを確認します。目視調査では、図面と現地の相違、各部位の建材、製品名・番号などを網羅的に確認します。
3. 不明な建材は分析するか含有とみなす
書面と目視で石綿含有の有無を判断できない建材は、試料を採取して分析機関で調べます。または、分析をせず「石綿有り」とみなし、法令に基づく措置を講じて除去する方法もあります。
出典: 厚生労働省「小規模工事等の着工前に必要な手続きについて」(確認日: 2026-08-24)
見積書では、分析する建材と検体数、分析しないで含有とみなす範囲、その判断による工法・費用・工期の違いを確認してください。
4. 調査結果を書面で受け取る
元請業者は事前調査結果を記録し、発注者へ書面で説明します。施主は、少なくとも次を確認します。
- 調査した建物、工事範囲、調査日
- 調査者の氏名と資格
- 調査した部位、建材、判定根拠
- 石綿有り、無し、みなし含有の区別
- 分析した場合の分析結果
- 含有建材がある場合の作業方法と行政手続

調査結果は元請業者等が3年間保存し、工事現場に備え付け、概要を掲示します。一定規模以上では、石綿の有無にかかわらず行政への結果報告も必要です。
調査結果で見積もりと工期を更新する
アスベスト関連費用は、事前調査と除去等工事を分けて確認します。厚生労働省が示す事前調査費用の項目例は、書面調査、現地調査、裏面確認調査、分析調査、総合調査報告書、交通費などです。
含有建材が見つかった場合は、次の項目を同じ調査結果に基づいて比較します。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対象建材 | 建材名、場所、状態、施工面積、みなし含有の範囲 |
| 作業計画 | 除去・封じ込め等の方法、作業順序、工期 |
| 飛散・ばく露防止 | 作業に応じた隔離・養生、湿潤化、集じん・排気、保護具 |
| 人員 | 石綿作業主任者、特別教育を受けた作業者、確認する資格者 |
| 廃棄物 | 梱包、保管、運搬、処分先、廃棄物区分 |
| 行政手続 | 事前調査結果報告、計画届、特定粉じん排出等作業届、自治体追加手続 |
| 完了確認 | 取り残し確認、作業写真、発注者への完了報告 |
建材の種類・状態・位置、施工面積、分析検体数、隔離方法、搬出経路、廃棄物処理、自治体の指導で条件が変わるため、この記事では費用の全国一律な相場は掲載しません。
「アスベスト調査・除去 一式」の総額だけで比べず、調査前の概算と調査後の確定見積を分けてください。結果によって工法や金額が変わるなら、対象、数量、作業方法、追加金額、工期を変更見積書または変更契約書にし、施主が承認してから該当作業へ進みます。
変更契約全体の確認方法は、解体工事の契約書チェックリストにまとめています。
レベル1・2・3は何が違う
レベル1・2・3は、石綿含有建材と除去等作業を整理する実務上の区分です。数字だけで建物全体の危険度や費用を決めるものではありません。
| 区分 | 主な建材例 | 手続・作業で見る点 |
|---|---|---|
| レベル1 | 石綿含有吹付け材 | 発じん性が著しく高い作業。隔離・負圧化等、作業に応じた厳格な措置と14日前の届出を確認 |
| レベル2 | 石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材 | 発じん性が高い作業。作業方法、隔離等の措置、14日前の届出を確認 |
| レベル3 | スレート、Pタイル等、その他の石綿含有建材 | 原形のまま取り外すことを基本とし、湿潤化等の飛散・ばく露防止措置を確認。自治体条例の届出にも注意 |
環境省は、吹付け石綿だけでなく、石綿含有成形板等や石綿含有仕上塗材を含む特定建築材料について、作業の種類ごとの作業基準を定めています。
出典: 環境省「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」(確認日: 2026-08-24)
レベル1・2の建材に係る作業では、施工業者による労働基準監督署への計画届と、発注者による地方公共団体への特定粉じん排出等作業実施届を確認します。作業開始14日前までの手続です。レベル3でも、自治体条例が別の届出を求めることがあります。
作業方法は建材と現場条件で変わります。見積書に「レベル○対応」とだけ書かれている場合は、対象建材、作業範囲、除去方法、養生、確認方法を作業計画で確かめてください。最新版の技術資料は、環境省「石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」で確認できます。
工事中に予定外の建材が見つかったら
解体を始めてから、事前調査で見えなかった裏側や囲われた部分に別の建材が見つかる場合があります。そのまま壊さず、該当箇所の作業を安全に止めて、元請業者と調査者へ確認します。
- 発見場所と状態を、建材を傷つけない範囲で記録する
- 追加の目視・分析、またはみなし含有の対応を決める
- 作業計画、飛散防止措置、行政手続への影響を確認する
- 追加費用と工期を施主へ書面で示す
- 必要な手続と変更契約の後に作業を再開する
施主が破片を持ち帰ったり、表面を削って確かめたりしないでください。粉じんを発生させず、現場管理者の指示に従います。
除去工事後に受け取る書類
元請業者は、石綿含有建材の除去等作業が終わったら、作業計画どおりに飛散防止措置が行われたか、除去面に取り残しがないかなどを確認します。特定粉じん排出等作業の結果は、発注者へ書面で遅滞なく報告し、写真を含む作業記録等を保存します。
出典: 環境省「石綿の除去等作業完了後は、確認及び発注者への報告が必要です。」(確認日: 2026-08-24)

契約時に、次の書類を受け取る日と形式を決めておきます。
- 事前調査結果報告書と、分析した場合の結果
- 80㎡以上など行政報告対象の場合の受付結果
- レベル1・2などで必要な計画届・作業実施届の控え
- 石綿含有建材の場所と作業方法を示す作業計画
- 掲示、養生、除去、清掃、取り残し確認などの作業記録・写真
- 元請業者から発注者への除去等作業完了報告書
- 廃棄物の種類、運搬、処分先を確認できる契約上の完了資料
産業廃棄物管理票と、施主が工事後に受け取る報告の違いは、解体工事のマニフェスト確認方法で整理できます。
アスベスト対応業者の確認チェックリスト
調査前
- ☐ 建築確認申請の副本、設計図、改修履歴、過去の調査結果を探した
- ☐ 事前調査の対象が解体部分の全材料になっている
- ☐ 調査者の資格名と、今回調査できる建物・範囲を確認した
- ☐ 書面調査、現地調査、裏面確認、分析、報告書の費用を確認した
- ☐ 不明建材を分析するか、みなし含有にするかの決め方を確認した
調査後・契約前
- ☐ 調査部位、建材、判定、根拠を記載した報告書を受け取った
- ☐ 含有建材の場所、面積、状態を見積書と照合した
- ☐ 作業方法、養生、湿潤化、集じん・排気、保護具を確認した
- ☐ 石綿作業主任者と特別教育を受けた作業者の配置を確認した
- ☐ 行政報告・届出の担当者、提出先、期限、控えを確認した
- ☐ 調査前の概算から変わる費用と工期を書面で合意した
- ☐ 自治体の調査・除去補助は、契約前の申請が必要か確認した
工事中・工事後
- ☐ 調査外の建材が見つかったときに作業を止める手順を確認した
- ☐ 作業状況を写真等で記録できるよう配慮した
- ☐ 取り残し確認を誰が行うか確認した
- ☐ 写真を含む作業記録と完了報告を受け取った
- ☐ 廃棄物の運搬・処分を確認する資料を受け取った
次の一歩
現地調査を依頼するときは、各社へ同じ質問を送ります。
解体部分の全建材を対象に、誰がどの資格で事前調査し、不明な建材をどう判定しますか。調査費、行政手続、含有判明後の変更見積、工事後に受け取れる記録を分けて示してください。
この記事は2026年8月24日時点の厚生労働省・環境省・国土交通省の公式情報をもとにしています。調査、分析、除去等の作業方法、行政手続、費用、補助制度は、建材、工事範囲、現場条件、自治体条例によって変わります。契約・着工前に、資格者の調査結果と工事場所を管轄する行政機関の最新案内を確認してください。